含み資産 hidden asset 2007 10 28

「夏草や兵どもが夢の跡」(松尾芭蕉)
 また今日も昔話をすることにしましょう。
これは、日本の不動産バブルと言われた1980年代後半の話です。
 当時、日本では、不動産バブルだけでなく、
株式市場もバブル状態になっていたのです。
 ある会社(A社)は、大した業績もないのに、株価は、鰻登りとなっていたのです。
あまりの高値となった株価を説明するために、
当時は、よく「含み資産」という言葉が使われました。
 確かに、A社の業績は、いまいちだが、
東京都内に、広大な土地を所有している。
その土地の評価をすれば、まだ株価は割安であると言われたのです。
それを根拠に、さらに株価は上昇しました。
同時に、A社も、不動産を担保に、お金を借り続けたのです。
銀行も、右肩上がりに上昇する不動産を担保に、
いくらでも、お金を貸してくれたのです。
 個人も、今からすれば、おかしなことを話していたのです。
「マンションを買えば、一戸建ての家が買える」と。
当時は、マンション価格も上昇を続けていて、
駅に近いマンションは、買値よりも、中古価格の方が高くなることがありました。
新築マンションを3000万円で買っても、不動産バブルによって、
中古価格が4000万円、5000万円になることもあったのです。
だから、個人も、強気で、多額の借金をして、
銀行も、気前よく、個人に大金を貸したのです。
 この時は、マンション神話、マンション伝説というものもありました。
こうしたマンション伝説は、東京郊外の、だいぶ離れた土地にも広がっていきました。
バブルの最後には、田園風景の中にも、巨大なマンションができました。
地元の人は、こう言っていました。
「そもそも、マンションというものは、大都市にあって、駅の近くにあるものである。
それが、なぜ、こんな田舎にマンションができるのだ。
東京まで、電車で1時間以上かかるのに。
しかも、このマンションから駅まで車で10分以上かかる。
それなのに、こんなに高い。
投資用のマンションなのか。
こんな田舎なのに、おかしい」
 今でこそ、多くの人は無謀だと思うでしょうが、
当時は、不動産価格というものは、右肩上がりに上昇するものと考えられていて、
それが、まるで神話のようになっていたのです。
この時こそ、「含み資産」という言葉が、最高に輝いた時でした。
 誰もが、不動産による資産効果を信じていたのです。
それが、永遠に続くものと思ってしまったのです。
しかし、終わりの日は、意外にも早く到来したのです。
 それから、10年以上、来る日も来る日も、
法人も個人も、そして銀行も、
「逆資産効果」に悩まされ続けたのです。
何しろ、今度は、不動産価格が右肩下がりに下がり続け、
株価も、右肩下がりに下がり続けたのです。
 これが、後に「失われた10年」とも「失われた13年」とも言われるようになった、
日本の不動産バブルの崩壊です。
 「夏草や兵どもが夢の跡」
今も田園風景の中に建つマンションを見て、そう思いたくなります。




















































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